安息日学校部

第1課 聴覚しょうがい者用:下村 和美

2020年第1期「ダニエル書」(主イエス・キリストの愛と品性の啓示) 

PDFダウンロードルビ付きの原稿はPDFからご覧ください

第1課 読むことから理解することへ 下村 和美

 

1.安息日午後

「フィリポが走り寄ると、預言者イザヤの書を朗読しているのが聞こえたので、『読んでいることがお分かりになりますか』と言った。」(使徒言行録8:30)。この今週の暗唱聖句の「読んでいることが分かりますか」という言葉から、私達が「ダニエル書」を読んで分かりやすいように、5つの研究を進める上で頼りとなるポイントが紹介されています。

①ダニエル書を含む聖書全体の中心がキリストであること。②ダニエル書は、文学的に美しい形で主要な焦点が分かりやすい形で構成されていること。③古典的預言と終末論的預言の違いを理解すること。④ダニエル書の預言の概略が長期的であって、1日が1年の原則で計算されていること。⑤ダニエル書が預言と同時に、現在を生きている私達の個人的生活にも深く関わりがあることの5つのポイントが示されています。

 

2.日曜日:キリスト ダニエル書の中心

聖書の中心はキリストであることがダニエル書の各章にも表されています。ダニエル書1章では、ダニエルたちが食事の面で異教の闇の勢力と対決した経験はキリストが闇の勢力と対決した経験に似ています。2章の異教の国バビロンの王が見た夢の中に出て来た巨大な人間の形をした像が最後に破壊される場面は、この世のあらゆる国が最終的にキリストの王国に置き換わることを伝えています。3章の燃え盛る炉の中を、神様を信じる忠実な僕と一緒にキリストが歩く姿は、現在、神様を信じる者が燃え盛る炉のようなこの世の苦しみの中を、キリストが一緒に歩いてくださっている姿に似ています。4章では、神がしばらくの間、異教のバビロンの王ネブカドネツァルを王位から外したことが、天の神様こそがまことの支配者であって、地上の王の権威も神様が支配していることを示しています。5章は、バビロンの王ベルシャツァルがペルシャに負けたことは、終わりの時代にキリストと天使たちがサタンの勢力に勝利することを予め示しています。6章は、異教のバビロンの王ダレイオスがダニエルを助けようとしたように、ローマの総督ピラトもキリストの命を助けようとしました。7章は、人の子としてのキリストが王権を受け、御自分の民を支配することが描かれています。8章は、天の聖所の祭司としてのキリストを明らかにされています。9章は、十字架上のキリストの死によって、神と神の民との契約が改めて成立したことを示しています。10章から12章は大天使長ミカエルとしてのキリストが悪の勢力と戦って神の民を死の力から救出したことが書かれています。

 

3.月曜日:ダニエル書の構造

ダニエル書の構造は、2章、3章、4章、5章、6章、7章までの真ん中に4章、5章に書かれている構造は、地上の王国が裁かれる内容が、神が地上の王たちを立てたり、取り除いたりする権利を持っていることを強調したい構造になっています。因みに、2章と7章は「幻」3章と6章は「救出」の内容が書かれています。また、もう一つのダニエル書の内容が強調される方法として、神は同じ内容を、視点を変えて繰り返して伝えて強調しています。例えば、2章で伝えられたダニエルの時代から現在、そして将来に起ころうとしている神様の国が出現について7章でも、8、9章でも、10章から12章にも繰り返し示され、合計で4回も繰り返して神様がこの世の歴史を全て支配されていることが描かれています。

 

4.火曜日:ダニエル書の終末論的預言

ダニエル書に記録されている終末論的預言の幻と、旧約聖書の他の預言者たちが伝えた古典的預言とは質的に異なります。終末論的預言では、神はおもに夢と幻を使って神のメッセージを預言者に伝えたのに対して、古典的預言では「主の言葉」によって神様のメッセージを預言者に伝えています。また、終末論的預言では、神は人間の現実世界を超えた色々な動物が合成された動物や羽や角を持つ竜を使って象徴的なイメージで伝えていますが、古典的預言の多くは現実にある対象を用いて伝えています。そして、終末論的預言では、人間の選択とは全く関係なく、全て神の権威によって無条件に、この世の終わりを予め知らせています。これに対して古典的預言では、神とイスラエルの民との契約において、しばしば人間の応答に左右されて預言のメッセージが与えられています。

この古典的預言と終末論的預言の違いを知っていることで、3つの役に立つことがあります。①神が預言者に神様のメッセージを伝える方法には、様々な方法があることが分かります。(ヘブ1:1)②聖書の文学的美しさと複雑さをより深く理解するうえでの助けとなります。③聖書の預言は、聖書全体のあかしと一貫性があって、真理の言葉を正しく説明するうえで助けとなっています。

 

5.水曜日:神の時間の尺度

終末論的預言に対する歴史主義者的な研究方法には、過去主義、未来主義、理想主義といった異なる見解と比較して理解することができます。過去主義は、ダニエル書の中で起こった出来事が、過去に起こった事とみなす傾向です。未来主義は、ダニエル書の中で起こった出来事が、未来に起こると思ってまだ待っている考えです。そして、理想主義は、過去や未来など歴史的な出来事が起こったとは考えないで、一般的な霊的現実であると考えています。

これに対して歴史主義は、ダニエル書の中で起こった出来事をダニエルの時代からこの世が終わる終わりの時代に至るまでの歴史を明らかにしていると考えています。エレン・G・ホワイトを含むアドベンチストの先駆者たちも、ダニエル書や黙示録の預言を歴史主義、ダニエルの時代からこの世が終わる終わりの時代に至るまでの歴史を明らかにしていると理解しています。

また、ダニエル書を研究する時の預言の時間は、「1日=1年の原則」に従って計算しています。この「1日=1年の原則」は、ダニエル書における預言の1日は、実際の歴史的時間の1年に等しいということになります。

この時間の考え方は、いくつかの理由が考えられます。①幻が象徴的なので、時間も象徴的と考えられます。②幻の諸事件は、ダニエルの時代から世の終わりの時代までの長い時間の中にあるので、それに応じて解釈すると1日が1年と解釈されてもおかしくないと考えられています。③1日=1年の原則は、ダニエル書の70週の預言に当てはめて見ると、ダニエルの時代の王であるアルタクセルクセスからメシアとしてキリストが来られる時までの時間の経過が適切に当てはまっていると考えています。

 

6.木曜日:ダニエル書の現代的関連性

ダニエル書は2500年以上も前に書かれましたが、現在の神の民にも深い影響力を与えている3つの領域があります。①物事がうまくいかない時にも、神が支配しておられ、神を信じる者に最善の道を提供しようと考えることができます。私達が試練や試みの中にあっても神は決してお見捨てにならないことを示しています。②罪と暴力にあふれ、混乱してどちらに向かえばよいのかわからない状況であったとしても、ダニエル書のメッセージは、神様が全ての時間の流れである歴史を支配されて私達を正しい道に導いておられることを教えています。③神の言葉に忠実に留まり、ダニエルの友人たちのように全てを神様に忠実に捧げた経験は、現代を生きる私達に良き模範となり、励ましを与えてくれます。

例えば、2019年、このようなことがありました。約10カ月にわたる苦しい入院生活に耐え、次の目標をしっかりと見据えて、白血病と闘っている競泳女子の池江璃花子選手は退院を明らかにし、2024年パリオリンピック出場に意欲を示しています。東京オリンピックのヒロイン候補であった競泳女子の池江璃花子選手が病を発表したのは2019年2月でした。それでも池江選手は前向きに、自身のツイッターでは「神様は乗り越えられない試練は与えない、自分に乗り越えられない壁はない」(1コリント10:13)と力強い聖書のみ言葉を発信しました。その後、激しい吐き気などを伴う抗がん剤治療に「思ってたより、数十倍、数百倍、数千倍しんどいです」とつづったこともありますが、「大丈夫、大丈夫、いつか終わる」と自らを奮い立たせて治療に挑んできました。東京オリンピックに向けては、諦めることになりますが、新たなパリでのオリンピックの夢に向かって大きな一歩を踏み出しました。

ダニエルの時代に働いて下さった神様は、今の時代にも力強いみ言葉をもって働いてくださっていることに希望を持ってキリストと共に、これからも歩みたいと思います。

 

7.金曜日:さらなる研究

聖書は、この世の全てを創造された神様の御心を知りたいと願う人に、預言者を通して、やがて起こるべき事柄について確かな道を示す言葉をお与えになっています。また、祈りながら聖書を学ぶ誠実な全ての人に、真理の光は明らかにされました。ダニエルたちが生きた誘惑の多い時代に、日々、神様を讃え、神様に栄光を帰して、悪を避けて歩む人の忠誠心に、神様は豊かに祝福で報いて下さいました。