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第3課 すべての未来の世代(ノア契約) 下村和美
1.安息日午後
自然界にいるバクテリアは非常に小さな微生物ではあるが、成長に必要となる十分な温度や湿度、食物という条件が整えば一気にその数を増やすことができるのと同じように、神様が完全な形に造られたこの世界に、罪が入り込んだ後の人間の悪は、一気にその数を増やして、世界中に広がりました。
長生きすることに恵まれて、すごい勢いで増える人間は、神様から離れることを選び、神様から人間に与えられた知性や健康、能力を悪いことを追い求めるために使っていたので、神様は洪水を起こして止めようとしました。
今週のポイント
①神の創造の御業に対して、罪は何をしたのか
②ノアはどのような人であったのか
③ノアとの契約の際の契約内容は、どんな内容が考えられたのか
④洪水前に結ばれたノアとの契約の中に、神の恵みはどのように表されたのか
⑤洪水後に神が人類と結ばれた契約は、神の私達に対するいつでも変わることのない愛について、どのように教えているのか
2.日曜日:罪の原則(創世記6:5)
神様がこの地上を創造された御業の終わった時に、この世界は「極めて良かった。」(創世記1:31)のですが、その後に罪が入って、世界は神様の決まりを守らなくなり、全てが神様の良く思われないものとなってしまいました。人間も神様の愛と忍耐と赦しから離れ、神様でさえ受け入れることができない行いをするようになりました。
何故、世界はこのように早く世界は悪に染まったのかが分かる聖句が次のように書かれています。
「女が見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引き付け、賢くなるように唆していた。女は実を取って食べ、一緒にいた男にも渡したので、彼も食べた。」(創世記3:6)
「神は言われた。『お前が裸であることを誰が告げたのか。取って食べるなと命じた木から食べたのか。』アダムは答えた。『あなたがわたしと共にいるようにしてくださった女が、木から取って与えたので、食べました。』主なる神は女に向かって言われた。『何ということをしたのか。』女は答えた。「蛇がだましたので、食べてしまいました。」(創世記3:11~13)
「カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。」(創世記4:5)
「カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。」(創世記4:8)
「レメクは二人の妻をめとった。一人はアダ、もう一人はツィラといった。」(創世記4:19)
「さて、レメクは妻に言った。『アダとツィラよ、わが声を聞け。レメクの妻たちよ、わが言葉に耳を傾けよ。わたしは傷の報いに男を殺し/打ち傷の報いに若者を殺す。』(創世記4:23)
「神の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、おのおの選んだ者を妻にした。」(創世記6:2)
「主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、…この地は神の前に堕落し、不法に満ちていた。」(創世記6:5、11)
人間が神様から離れて「主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、…この地は神の前に堕落し、不法に満ちていた。」(創世記6:5、11)という状態が、聖書に書かれていない空白の時代の後に突然起きたのではなく、当時の人間が悪い道に徐々に進んで行った歴史や原因がありました。
人間が神様から離れて悪い道に進む罪は、放っておいても自然に治るものではなく、食い止めなければ増え続け、私達が滅びと死に至るまで決して留まることはありません。
これほどまでに神様から離れた罪の世界になっては、義と愛の神様が罪を憎み、罪を全て滅ぼされるのも当然ですから、神様からの良い知らせとは、神様が罪を全て滅ぼし、私達罪人の救いを願っておられるということであり、これが神様との契約の全てです。
3.月曜日:人間ノア(創世記6:9)
大洪水前の人々が起こした悪いことの中で、ノアの周囲の人々とノアは、当時の他の人たちと大きく3つの点「正しい人」「全き人(敬虔な正しい生活を送る人、正直な、誠実な、清廉潔白、という意味
)」「神と共に歩んだ人」という点で違っていることが創世記6:9(口語訳)に書かれています。
「ノアの系図は次のとおりである。ノアはその時代の人々の中で正しく、かつ全き人であった。ノアは神とともに歩んだ。」(創世記6:9口語訳)
ノア達は、神様から離れ、悪いことをする人々が多く住んでいる時代の中で、正しく、かつ全き人(敬虔な正しい生活を送る人、正直な、誠実な、清廉潔白、という意味)として、神様と共に歩んだ人達でした。
ノアは神様との救いの契約を持っていた人だったので、神様の話をよく聞いて従い、神様を信頼する人でしたので神様は、神様のこの地上での目的を達成するためにノアを用いることができました。
新約聖書では、ペトロがノアという人物のことを「義の宣伝者」と呼んでいます。
「また、古い世界をそのままにしておかないで、その不信仰な世界に洪水をきたらせ、ただ、義の宣伝者ノアたち八人の者だけを保護された。」(2ペテロ2:5口語訳)
創世記6:8(口語訳)には「しかし、ノアは主の前に恵みを得た。」と書かれています。この聖句に出て来る「恵み」という言葉が、聖書で最初に出て来る「恵み」という言葉で、この「恵み」は、ノア自身が自分で正しいことをして、自分で全き人(敬虔な正しい生活を送る人、正直な、誠実な、清廉潔白、という意味)になって、立派なことをしたから救われるのではなく、神様が罪人の私達を罪の世界から救おうとする行為によって私達は救われた「恵み」であって、ノアも私達と変わらない罪人でした。
4.火曜日:ノアと結ばれた契約
「ただし、わたしはあなたと契約を結ぼう。あなたは子らと、妻と、子らの妻たちと共に箱舟にはいりなさい。」という創世記6:18口語訳の聖句は、神様が人間と結ばれる聖書的な契約の基本的な原則は、神様と人類の同意に基づいているということでした。
まず、ノア達人間の側の神様に従うということです。神様はノアとその家族に箱舟に入るように言われました。この神様とノア達との間で結ばれた契約に対して、ノア達がしなければ契約は破棄され、契約の恩恵を受けるはずであったノア達は、最終的に損失を被ることになります。
神様は、同じ創世記6:18の別の訳の英語欽定訳では「わたしの契約」と言っています。この神様が言われる「わたしの契約」について、神様は再びノア達に「恵み」を示します。神様が罪のために悪いことがたくさんある時代から私達人類を救うために、私達人類よりも先に神様ご自身が喜んで、私達人類を救うために行動を起こしてくださった神様の一方的な恵みです。しかし、神様にも「神様の愛する者たちが永遠の命を得るという利益」があるということに喜びがありました。
この神様と人間との間で結ばれる契約には、全て神様側と人間側の同意が必要でした。その同意の例えとして、一人の男性が嵐の中に船から投げ出された時、船の甲板にいた乗組員は、浮き輪を投げるからつかまるように、海に投げ出された人に叫びます。海中の男性は、この投げられた浮き輪をつかみ、それに身を預けるという「取引」に同意しなればなりません、同じように形は違っても、神様が投げかけた一方的な「わたしの契約」に、人間はしがみ付き、身を預けて同意しなければ契約は成り立ちませんでした。
5.水曜日:しるしの虹
大洪水の後、神様は創世記9:12,13で「更に神は言われた。「あなたたちならびにあなたたちと共にいるすべての生き物と、代々とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれである。すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。」という神様と人間との間の約束の言葉を残します。
神様が雲の中に虹を現わされると、神様は、神様と私達人間ならびに全ての生き物、全て肉なるものとの間に立てた契約を思い起こし、もう水が大洪水となって全てを滅ぼすことは決してないという永遠の契約を心に留めるとノアに言われました。これが、私達と地上の全て肉なるものとの間に立てた神様との契約のしるしです。
神様は虹を「わたしの契約」(創世記6:15新改訳2017)のしるしとすると言われたこの「契約」という言葉は、他のアブラハムとの契約やシナイ山での契約などと異なっています。
このノアとの契約には、その利益を受ける対象が誰も示されず、全ての人間、「すべての生き物、すべて肉なるもの」(創世記9:15)、「未来の世代」(創世記9:12英語改定標準訳)のために語られているので、万人に向けて語られた契約であり、神様に従う者であるか否かという条件が全くないというのがノアとの契約であって、神様と人間の関係について語る時に、聖書のどこにもない契約です。
6.木曜日:「そしてノアだけが残った」
「地の面にいた生き物はすべて、人をはじめ、家畜、這うもの、空の鳥に至るまでぬぐい去られた。彼らは大地からぬぐい去られ、ノアと、彼と共に箱舟にいたものだけが残った。」(創世記7:23)この聖句の中に、聖書に出て来る「残りの民」という思想が初めて登場します。この聖句の「残った」と訳されている言葉は、旧約聖書では「残りの者」という意味で何度も使われている言葉の意味の基となる部分となり、この「残りの民」と同じ意味で使われている聖句は、以下の聖句でも使われています。
「神がわたしをあなたたちより先にお遣わしになったのは、この国にあなたたちの残りの者を与え、あなたたちを生き永らえさせて、大いなる救いに至らせるためです。」(創世記45:7)
「そしてシオンの残りの者、エルサレムの残された者は、聖なる者と呼ばれる。彼らはすべて、エルサレムで命を得る者として書き記されている。」(イザヤ4:3)
「その日が来れば、主は再び御手を下して/御自分の民の残りの者を買い戻される。彼らはアッシリア、エジプト、上エジプト、クシュ、エラム、シンアル、ハマト、海沿いの国々などに残されていた者である。」(イザヤ11:11)
これらの旧約聖書の「残りの者」はみな、創世記7:23に見られる「残った」と関連する言葉です。
大洪水の時代に、創造主である神様は世の裁き主となられました。現代においても、近づいている世界規模の裁きの時である再臨の時に、誰がノア達のように生き残り、誰がノア達のように残りの民となるのでしょうか。
大洪水の時代は、ノアとノアの家族が生き残り、残りの民となりましたが、ノアの救いは、ノアと結ばれた神様の契約によるものでした。「わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。」(創世記6:18)この神様とノアとの契約は、神様がお立てになり、憐れみと恵みの神様によって実行された契約でした。
ノア達はただ、神様がノア達に箱舟を用意されたので生き残ったのと、ノア達の側が神様を心から信頼する神様への協力も必要でした。
終わりの日の出来事には残りの民が神様のために立つ時が来ます。
「竜は女に対して激しく怒り、その子孫の残りの者たち、すなわち、神の掟を守り、イエスの証しを守りとおしている者たちと戦おうとして出て行った。」(黙示録12:17)
これから起ころうとしている再臨の神様の裁きの時に残りの民に加わるための備えとして、ノアの物語はどんな教訓を教えていましたか。私達はノア達のように神様との契約を、ただ信頼する者でありたいと思います。
7.金曜日:さらなる研究
「SDA聖書注解」第1巻265頁 英文
「自然現象である虹は、地上を二度と洪水によって滅ぼすことはないとの神様の約束の象徴として相応しかった。
洪水後、地球の気象条件は全く変わってしまった。世界のほとんどの地域で、それまで地を潤していた露に変わって雨が降るようになりました。この雨が降り始めるたびに、人の心に起こる恐れを静めるものが必要でした。霊の心は自然現象の中に、神様がご自身を現しておられるのを見ることができるようにされました。『世界が造られたときから、目に見えない神の性質、つまり神の永遠の力と神性は被造物に現れており、これを通して神を知ることができます。従って、彼らには弁解の余地がありません。』(ローマ1:20)こうして虹は、信じる者たちに、雨は祝福であり、全世界を滅ぼすものではないことの証拠とになりました。」