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第1課 ヘブライ人と私たちへの手紙 花田憲彦
1.安息日午後
神様は聖書の中に少なくとも一つだけ「完全な説教」を残してくださいました。それが、パウロによるヘブライ人への手紙で、現存する最も古い「完全な形のキリスト教の説教」と言われています。これは当時の困難な状況の中に置かれていた信徒たちに向けて書かれた手紙です。さまざまな試練の中にあって、信仰が試みられている信徒たちを励ますために書かれたこの手紙は、天の聖所におられるイエス・キリストを見つめ続けるように強く訴えかけます。同時に、そのメッセージは、終わりの時代に生きる私たちの信仰を奮い立たせます。
2.日曜日:輝かしい始まり
初代教会の時代、神様は「しるしと不思議な業」をもって、キリストを証しされました。そのために神様は、信徒たちに聖霊の賜物を分け与えることによって、彼らを用いて多くの病人を癒し、悪霊にとらわれ苦しめられている人々を解放し、力強い宣教の業を進められました。聖霊に満たされた彼らの祈りは大胆で確信に満ち、その信仰経験は喜びに満たされていました。彼らの心の中には、すでに「神の国」が到来していたのです。
3.月曜日:葛藤
ヘブライ10:32~34と13:3を読んでください。ここに彼らが経験した迫害の様子を見ることができます。彼らがイエス・キリストを信じる信仰によって堅く立てば立つほど、社会からは異質な存在として見られるようになっていきました。同時に、彼らの清さや正しさ、献身した姿は、汚れた生活をしている人々にとっては、自分が責められるように感じさせてしまうのです。自分の不徳を責められ、後ろめたさを感じるようになった人々は、クリスチャンたちへの反発を強めていきました。自分の間違った生き方を変えるのではなく、正しい人々を迫害することによって良心の呵責を静めようとしたのです。パウロは、キリストのゆえに苦しめられている同胞を励まそうとこの手紙を書いたのです。
4.火曜日:倦怠感
どんな信仰者であっても、社会から拒絶され、激しい迫害を受け続けると、信仰に疲れ、喜びが失われ、希望が見えなくなってしまうことがあります。彼らは聖霊の超自然的なみ業を見、大リバイバルを経験しましたが、たび重なる迫害と試練の中で、経済的にも心理的にも消耗し、疲れ果て、希望を失いそうになっていました。テキストには列王記上19:1~4が引用されていますが、あの偉大な預言者エリヤも、試練の中で信仰の挫折と燃え尽きを経験しました。
あなたは、そのような信仰経験をしたことはありませんか? 私にはあります。でもそんな時、私を救ってくれたのは、聖書のみ言葉でした。問4に、ヘブライ人への手紙の中からいくつかの箇所が引用されていますので、すべての箇所を調べ、祈りのうちに深く瞑想してみてください。聖書の励ましの言葉は、私たちを再び立ち上がらせる力があるのです。
5.水曜日:一致団結する
預言者エリヤは、燃え尽きてしまい、すべてを置いて逃げ出しました。「神様、私を殺してください」と、自らの死を望む極度のうつ状態です。でも愛に満ちた神様は、エリヤがこの挫折を克服できるように助けてくださったのです。まず、天使を遣わし、食物を備え、肉体的な休養を与えてくださいました。
私は青年時代、大きな挫折を経験して、部屋に引きこもってしまったことがありました。でも、両親は私を責める言葉は一切言わず、ただあたたかく迎えてくれたのです。仕事もせず、引きこもっていた息子に対して、言いたいことはたくさんあったと思うのですが、何も言わず、食事を作ってくれ、見守ってくれていたことを思い出します。
この時、天使はエリヤに触って、食事を提供しました。彼の弱さを責めず、ただ「起きて食べなさい」と言われたのです。エリヤは、ありのままの自分を受け止めてくれる神様の大きな愛に触れたのです。
迫害の中にあったクリスチャンたちに必要なのは、この神の愛に触れることでした。問6に挙げてある聖句を読んでみましょう。パウロは、イエス様が天において彼らを執り成しておられることを思い起こさせ、信仰をしっかりと保ち、互いに励まし合うように勧めたのです。
6.木曜日:終わりの時代
問7に挙げられている聖句を読んでみましょう。パウロは、この時代が「終わりの時代」であることを強調し、それにふさわしい信仰を持ち、生きることを強調しています。パウロは、出エジプトをしたイスラエルの民が、カナンの地に入る直前に経験したことと重ね合わせて、その失敗を繰り返すことがないように警告しています。第一に、信仰を堅く保ち、イエスに目を注ぐこと。第二に、不道徳と貪欲に警戒すること。第三に、リーダーたちを見倣い、彼らに従うことなどを勧告しています。そのパウロの思いの背後にあるのは、「もう少しすると、来るべき方がおいでになる。遅れられることはない」(ヘブライ10:37)という、再臨の切迫感です。彼らはカナンの地を目前にして失敗してしまいました。同じ過ちを、再臨によってもたらされる神の国を目前にしているクリスチャンたちに犯してほしくないという切実な願いです。この勧告は、終わりの時代に生きている私たちアドベンチストに対するメッセージでもあるのです。
7.金曜日:さらなる研究
テキスト10ページにある、『国と指導者』上巻133、134ページからの引用文を祈りつつ瞑想してみましょう。今週の学びを通して、試練にあった時、気持ちが沈んだ時、誘惑にあった時、どのようにしたら、初めの信仰に立ち帰ることができるのか、どのようにしたら、堅く信仰を保つことができるのか、考えてみましょう。