セブンスデー・アドベンチスト教会

富の集中と崩壊

富の集中と崩壊

数年前までは、今世紀の半ばには中国がアメリカを追い抜くという予想を耳にしていました。アメリカの時代は終わったのだと言われていました。最近はまったくと言っていいほど聞かなくなりました。実態はアメリカの一人勝ちであることがだんだんと明らかになってきたのだと思います。
デジタル世界という新たな資本主義のフロンティアの圧倒的な支配者は、GAFAMを中心とするアメリカの巨大IT産業です。その支配力の結果、アメリカへの富の集中が進んでいます。日本の企業は、ビジネスを続けるためにはこれら巨大IT企業の提供するサービスを使わざるを得ません。その結果、多額の使用料を払っています。デジタル赤字と言われるこの流出は、昨年度6兆円を超えました。その姿は、デジタル小作人と揶揄されています。デジタル地主であるアメリカの企業に年貢を納める中世の小作人のようだというわけです。

最近、一時世界一の時価総額になり、話題になったエヌビディアという会社がありますが、その額は3兆ドルを超えています。日本の国家予算が1兆ドルを超えるくらいで、日本のGDPが4兆ドルを超えるくらいです。比較すると、これがどんなに異常な状況なのかがわかります。一企業の時価総額が日本の国家予算の3倍であり、日本全体の富の4分の3に迫っているのです。マイクロソフトもそれに匹敵するくらいの時価総額であることを考えると、アメリカ経済の圧倒的な強さは当然のことです。低迷する中国経済と比較して、その強さが際立っています。アメリカの影響力は減るどころか、明らかに増える一方なのです。ですから、世界は老人二人の戦いを固唾を呑んで見守っています。

これらの事態は、セブンスデー・アドベンチストの黙示録預言解釈、その理解の正当性を示しています。「わたしはまた、もう一匹の獣が地中から上って来るのを見た。この獣は、小羊の角に似た二本の角があって、竜のようにものを言っていた」(ヨハネの黙示録13章11節)。

これはアメリカであると解釈されてきましたし、イエス・キリストの再臨前の終末世界におけるキープレイヤーであると理解されてきました。合わせて黙示録は異常な富の集中が起きることも示唆していると考えられます。ただアメリカ単体では終末世界での役割は果たせません。カトリシズムと手を組むことで、政治と宗教の連合体であるバビロンは完成するでしょう。しかし、最後はそれも巨大な富とともに崩壊する日がきます。黙示録には、その時の人々の嘆きが次のように表現されています。
「不幸だ、不幸だ、大いなる都、麻の布、また、紫の布や赤い布をまとい、金と宝石と真珠の飾りを着けた都。あれほどの富が、ひとときの間に、みな荒れ果ててしまうとは」(ヨハネの黙示録18章16、17節)

*聖句は©️日本聖書協会

アドベンチスト・ライフ2024年8月号
教団総理 稲田 豊