セブンスデー・アドベンチスト教会

孤独の蔓延と神の福音

孤独の蔓延と神の福音

孤独、孤立化現象とその原因

20212月、日本で深刻化している社会問題が世界的に注目されました。内閣に孤独・孤立担当室が正式に設置されたことで、日本で孤独・孤立の問題がいかに大きなものであるのかが注目されたのです。設置されたのがコロナ禍の最中だったとはいえ、日本や他の多くの先進国における孤独の蔓延は、悪化の一途をたどっています。

1、孤独死

2、引きこもり

3、単身世帯が非常に多いこと

4、レンタル家族、ホストやキャバクラといった疑似的関係ビジネスの増加

といった現象は過去数十年にわたり、孤独が引き起こす社会現象となってきました。前記のリストに加え、自殺もまた孤独によって引き起こされる事象といえるでしょう。

最新の研究によれば、自殺念慮は経済状況、仕事のストレス、うつ病よりも、孤独感や生きる意味の欠如、必要とされていないと感じることと最も関連が多いことがわかっています。また2020年、11年ぶりに日本の自殺者が増加したことも、孤独・孤立担当室が設置された理由の1つに挙げられています。

孤独や社会的孤立が増えている理由を正確に特定するのは簡単ではありません。都市化、対面にとって代わるテクノロジーの進化、労働環境、社会情勢を非難する声もあります。しかし、究極的な原因は罪ではないでしょうか。アダムとエバが罪を犯したとき、人類は分断されました。罪は人類を神から引き離し、対立を引き起こし、エデンにおける本来の居場所から追い出される原因となりました。それ以来、孤独と壊れた人間関係は普遍的なものとなってしまったのです。

回復をもたらすすばらしい計画

しかし良き知らせは、イエスが罪によって壊れたすべてのものにいやしと回復をもたらすために来られたことです。パウロがガラテヤの信徒に書いたように、イエス・キリストが十字架上で成し遂げてくださった贖罪のゆえに、「あなたがたは皆、信仰により、キリスト・イエスに結ばれて神の子なのです。洗礼を受けてキリストに結ばれたあなたがたは皆、キリストを着ているからです。そこではもはや、ユダヤ人もギリシア人もなく、奴隷も自由な身分の者もなく、男も女もありません。あなたがたは皆、キリスト・イエスにおいて一つだからです。あなたがたは、もしキリストのものだとするなら、とりもなおさず、アブラハムの子孫であり、約束による相続人です」(ガラテヤの信徒への手紙32629節)。また、「これらはすべて神から出ることであって、神は、キリストを通してわたしたちを御自分と和解させ、また、和解のために奉仕する任務をわたしたちにお授けになりました」 (コリントの信徒への手紙二・518節)とあります。

イエスが成し遂げた和解は、私たちと神との関係のためだけではありませんでした。神のご計画は、地上における人間関係のいやしのためでもあるのです。神は罪によって壊れてしまったものすべてをいやし、回復させたいと願っておられます。これには、孤独や居場所の欠如という人間の深い感情のいやしも含まれます。

なんとすばらしい知らせでしょう。私たちの近所、職場、学校、そして教会で会う人たち、多くの人々が感じているニーズである孤独感は神の得意分野なのです。神は日本にいる何千万人もの人々の深い傷をいやす方法を知っておられます。神はそれをいやすために3つのことをされました。①み子を遣わされ、②あなたを救い、神の使者として(聖霊の約束とともに)遣わし、③「キリストの体」となる教会をあなたの地域で設立されたのです。

キリストの使者として

では、私たちはキリストの使者として、孤独な人々が愛と受容、そして居場所を見つける助けとなるために、どのように関わればよいのでしょうか?

ポイント1:真摯に耳を傾け、良い質問をすることで、人々(信者、未信者問わず)とつながる。

あなたの時間と関心を相手にそそぎ、神が導いてくださるように相手を祝福しましょう。つながる人を見つけるのに助けが必要な場合は、誰かにあなたを送ってくださるように祈り、神が導いてくださったらそれに応えられるように準備しましょう。

ポイント2:個人として、家族や小グループとして、あるいは教会として、人々が集える安全な居場所をつくる。

人は他者から知られ、愛され、自分自身であることを心地よく感じるときに帰属意識を覚えます。どうすれば居場所を作ることができるでしょうか。祈りながら聖霊の導きを求め、どのような環境が安全で歓迎されていると感じるかを考え、黄金律に従いましょう。「だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。これこそ律法と預言者である」 (マタイによる福音書712節)。

ポイント3:他のクリスチャンとともに弱さ、信頼性、相互愛を示す。

イエスは、「互いに愛し合うならば、それによってあなたがたがわたしの弟子であることを、皆が知るようになる」(ヨハネによる福音書1335節)と言われました。人々が私たちの家、グループ、教会にやってくるとき、完璧に行儀よく振舞う天使を見る必要はありませんが、イエスによって救われ、イエスの姿に変えられていく罪人を見る必要はあります。

神は、分断し崩壊した共同体をいやし、孤立した孤独な人々をいやす完璧な薬をもっておられます。エレン・ホワイトはこう言っています。「キリストの教会の使命は滅びゆく罪人を救うことにある。それは人々に神の愛を知らせ、その愛の力によって彼らをキリストに導くことである」

神の愛という薬は強力で、その処方は神の民、すなわち私たちを通してなされます。もし私たちが、家庭、近所、教会において、人々を受け入れ、居場所をつくり、愛しあう場を提供することができたら、この地上でエデンの回復の一部を見ることは可能だと信じます。「御国が来ますように。御心が行われますように、天におけるように地の上にも」(マタイによる福音書610節)。

1 Ozawa-de Silva, Chikako, The Anatomy of Loneliness: Suicide, social connection, and the search for relational meaning in contemporary Japan (Oakland, CA: University of California Press, 2021), 4.

2 Kodama, Shogo, Japan appoints 'minister of loneliness' to help people home alone (February 13, 2021), Nikkei Asia online, https://asia.nikkei.com/Spotlight/Coronavirus/Japan-appoints-minister-of-loneliness-to-help-people-home-alone (accessed August 4, 2023).

3 エレン・G・ホワイト、『今日の光』20193期「あなたがたは力を受ける」824日。

*聖句は©️日本聖書協会

ベン・ニコルス

1986年アメリカ、フロリダ州生まれ。サザン大学神学科卒、アンドリュース大学院神学修士号、九州で4年間牧会。現在Mission Unusual: Tokyo! 東京開拓伝道で弟子作りカリキュラム開発担当。東高円寺で家の教会を牧会し、クリスチャン背景のない人のための弟子づくりガイドブックを妻まどかと開発中。趣味はお菓子づくり。

アドベンチスト・ライフ2023年9月号