兼牧の教会が増えています。ひとりの牧師が3つ4つの教会や集会所、聖書研究会を牧することも珍しくなくなってきました。現実的に見て、無牧の教会が増えていくこの傾向はしばらくは続くでしょう。同時に信徒からの嘆きの声も聞こえてきます。牧師が忙しすぎて羊たちに目を向けてもらえない、その声を聞いてもらえない、祈ってもらえない。この現状はどう克服され、私たちの教会の羊は養われ、さらに教会の救霊の使命は果たされていくのでしょうか。
まず牧師がさらに有効な兼牧の方法を学び、より深い牧会者としての心を祈り求める必要があるでしょう。複数の教会を牧する知恵と知識と態度を修得することです。さらに教団教区は、複数の牧師で複数の教会を牧する共同牧会等、さらに有効な牧会システムを研究する必要があります。そしてもう一つの課題は、各教会、特に牧師不在の教会の信徒リーダーの育成です。
すでに素晴らしいリーダーシップを有している信徒が、私たちの教会にたくさんいらっしゃることは感謝です。月に一度、あるいは3か月に一度しか来ることのない牧師に依存せず、教会のプログラム、そして牧会までも切り盛りしていてくださる老若男女の信徒リーダーが、地方教会に何人もいてくださるのです。この小牧者たちがさらに研鑽を積むときに、小さな地方教会はさらに活性化され成長する、と信じています。
初代教会の時代、例えばパウロは数年あるいは数か月の間ひとつの町に滞在し教会を建て、そこに信徒リーダーを立てて次の町に移っていきました。教会はその信徒リーダーによって守られ、成長していきます。そして使徒はそれらの教会を巡回し、助言を与え、励ましたのです。初代教会に一教会一牧師の例は見られないと言います。そこにあるのは一牧師、多教会、そして信徒リーダーのシステムです。
これからの教会を考えるときに、この初代教会のシステムへの回帰、信徒リーダーの養成は急務だと言えます。信徒リーダーが三つの絆についてより深く学び、修得した時に教会はもっともっと強くなるでしょう。Reach Up(天との絆=礼拝と学び)、 Reach In(教会の絆=交わりと牧会)、Reach Out(地域との絆=伝道と奉仕)についての学びです。私たちの教会の信仰的で献身的な信徒リーダーがさらに研鑽を積み、より自信をもってそれぞれの教会をリードしてくださるときに、主の再臨前の私たちの教会の使命は果たされていくのだと思います。
男だけで5千人いた群衆の給食に戸惑う弟子たちにキリストは言われました。「あなたがたが彼らに食べ物を与えなさい」【(c)日本聖書協会 マルコによる福音書6章37節】。そして、キリストは弟子たちと共に働いて空腹の群衆を養われたのです。キリストと共に働いて教会を養い、育てるキリストの弟子、信徒リーダーが必要とされています。その信徒リーダーの育成のために、教団は訓練センターを建てたいと計画しています。
各教会が、特に無牧の小さな教会が祝福のうちにさらに元気になることを心から祈ります。
アドベンチスト・ライフ
2019年9月号
教団総理 島田真澄