セブンスデー・アドベンチスト教会

逆境を越えて

逆境を越えて

 「『主よ、今こそ彼らの脅しに目を留め、あなたの僕たちが、思い切って大胆に御言葉を語ることができるようにしてください。どうか、御手を伸ばし聖なる僕イエスの名によって、病気がいやされ、しるしと不思議な業が行われるようにしてください。』祈りが終わると、一同の集まっていた場所が揺れ動き、皆、聖霊に満たされて、大胆に神の言葉を語りだした」(使徒言行録4章29〜31節)。
 ペンテコステの経験の直後、ペトロとヨハネはエルサレム神殿の「美しい門」でイエス・キリストの名によって足に障がいを持つ男性を癒しました。群衆がこの奇跡に驚いて集まり、ペトロの説教に耳を傾けます。すると男だけで5千人の回心者が生まれたのです。事態を重く見たサドカイ派の人々は2人を捕らえて牢に入れ、議会を招集します。そして、2人を詰問するのですが、聖霊に満たされた2人が証ししたのは、十字架のキリストであり、キリストの福音でした。「ほかのだれによっても、救いは得られません。わたしたちが救われるべき名は、天下にこの名のほか、人間には与えられていないのです」(使徒言行録4章12節)。
 議会は、この堂々とした2人の態度に驚きます。彼らは無学な普通の人だったからです。そして、2人に決してイエスの名によって語ることがないように脅すのですが、返ってきたのは「神に従わないであなたがたに従うことが、神の前に正しいかどうか、考えてください。わたしたちは、見たことや聞いたことを話さないではいられないのです」(使徒言行録4章19、20節)との毅然たる言葉でした。議会はさらに彼らを脅し、釈放します。
初代教会の伝道は決して簡単なものではありませんでした。イスラエルはユダヤ教に支配され、ローマ帝国は皇帝礼拝への道を進んでいました。その環境の中で異端とも言われるキリスト教を宣べ伝えていくのです。ユダヤ教からもローマ帝国からも迫害されるのですが、その前進が止まることはありませんでした。
 釈放された2人が向かったのは仲間のところ、教会でした。2人の証から教会は事態が深刻であることを悟ります。ユダヤ教指導者からキリスト教伝道禁止命令を下されたのです。そのとき教会は心をひとつにし、声を上げて祈りました。この困難な状況の今こそ「思い切って大胆に御言葉を語ることができるようにしてください」との冒頭の祈りです。
サタンは、福音宣教をとどめるために教会に外なる敵と、内なる敵を与えます。外なる敵とは環境です。教会の周りに伝道を阻害する政治的、宗教的、文化的困難を置くのです。内なる敵とは教会の精神です。あらゆる言い訳による伝道への否定的、消極的な思い、確信です。初代教会はこの両方の敵に打ち勝ちました。まずは内なる敵への勝利です。彼らは聖霊に満たされて、内なる敵を凌駕し外なる敵に立ち向かいました。そして、キリスト教は逆境を越えて世界宗教へと成長していくのです。
 私たちも聖霊に満たされて、内なる敵、外なる敵を越えて人類の唯一の救い主イエス・キリストを、その福音を大胆に語っていきましょう。

教団総理 島田真澄 アドベンチスト・ライフ2018年5月号