想像してみてください。もし、あなたがビーガンステーキを注文したのに、その店自慢の特別メロンパンセットが運ばれてきたら、どう感じるでしょうか。どんなにおいしくても、それは望んでいたものではありません。私たちの教会も、神の「ご注文」とは違うものを差し出していないでしょうか。
神が求めておられること
今、多くの教会が「人が求めるもの」に応えようと努力しています。それ自体が悪いわけではありませんが、最も大切なのは「神が求めておられること」を真剣に求めることです。聖書の中で、神ははっきりとご自身の願いを示されています。「互いに愛し合いなさい」(ヨハネによる福音書15章12節)、「一緒に食事しなさい」(使徒言行録2章42節参照)、「全世界に行って弟子を作りなさい」(マタイによる福音書28章19節参照)─それらが神のご注文です。
しかし、私たちは時に、自分の経験や伝統、人間の判断で教会のあり方を決めてしまいます。ルカによる福音書12章のたとえ話のように、主の指示を怠る僕には厳しい結末が待っています。私たちも、神の御心から目をそらしていないか、振り返る必要があります。
また、マルコによる福音書7章でイエスは、「人間の教えを神の教えとすり替えてはいけない」と厳しく戒めました。どんなに長年守ってきた伝統であっても、それが神の願いとずれているなら、見直す勇気が必要です。
教会とは、「キリストの体」であり、聖なる神の宮です(コリントの信徒への手紙一・3章16、17節)。それは神の所有物であり、人間の自由なアイデアや便利さで形づくられるべきものではありません。神が喜ばれるものを第一に求める場所であり、神の臨在が満ちる神聖な場なのです。
パウロは、人々に喜ばれることより、神に忠実であることを選びました(同1章17節)。私たちも、人々が「来やすい教会」は大事ですが、「神の御心が行われる教会」を同時に目指すべきではないでしょうか。
子どもが夜遅くに「疲れたから、コーヒーが飲みたい」と言ってきたら、「寝なさい」と言うのが愛です。同じように、教会もただ人が欲しがるものを与えるのではなく、神が「今その人に本当に必要だ」と思われるものを差し出すべきです。それが、愛であり、真の導きです。
教会の成功
教会の成功とは、どのように評価することができるのでしょうか。
バプテスマの数、聖書研究の数、礼拝出席者の数、献金額などなど、いろいろな方法で、私たちは教会の状況を把握しようとしてきました。しかし、私の大学院での宣教学の教授はこのように言いました。「The success of the church is not the SEATING capacity, but the SENDING capacity.(和訳:教会の成功とは、教会出席者数ではなくて、教会から送り出している人の数です)」
教会の使命とは、神の真理と愛をもって人を育て、整え、世に送り出すことです。どんどん宣教師を育成して、宣教師を送り出すことです。いかなる職業についていても、神の愛と真理を抱いて、未開拓地に行く者は立派な宣教師です。そしてその中心には、必ずイエス・キリストがいなければなりません。イベントや建物は脇役であり、教会の魅力の中心は「福音」であるべきです。
私たちの使命
私たちは、セブンスデー・アドベンチスト教会です。私たちの使命は、「永遠の福音」を語ることです。黙示録14章6~12節に示されているメッセージを大胆に、キリストの愛とご品性を反映しつつ語ることです。イエスは、十字架で私たちの救いのために自らの命をお捧げになりました。イエスの命懸けのラブコール、絶大な愛の思いを抱きながら、「永遠の福音」を語りましょう。
みなさんは、三天使のメッセージを簡単にご家族やお友だち、ご近所の方や同僚に説明できますか。説明できない場合は、決して恥ずかしく思う必要はありません。落胆して絶望する必要はありません。今からでも遅くありません。ぜひとも、所属教会の牧師や長老たちに相談してみてください。「子どもから大人まで楽しく語る三天使のメッセージ勉強会」などを開くのはいかがでしょうか。
私たちは、セブンスデー・アドベンチスト教会です。日本全国には集会所や聖書研究会を含めて、200近い教会があります。東の教会、西の教会、沖縄の教会、地域によって、組織の枠組みによって、ちょっとずつ文化や課題なども異なっています。しかし、同じ一つのセブンスデー・アドベンチスト教会という事実は変わりません。個々の〇〇教会という建物とその建物に集まる人たちだけに集中しすぎて、日本全国のセブンスデー・アドベンチスト教会の一員としての自覚、そして世界のセブンスデー・アドベンチスト教会員としてのアイデンティティーを忘れてはいないでしょうか。
同じチームとして
隣の教会が伝道に成功したら、一緒に喜びましょう。隣の教会が悲しんでいたら、一緒に悲しみましょう。隣の教会が開拓伝道に挑戦しているのであれば、必死に祈って応援しましょう。個々の所属教会は違うかもしれませんが、同じチームです。同じセブンスデー・アドベンチスト教会員として、前進しましょう。
私たちは今、新しい時代の伝道や教会形成─開拓伝道やハウスチャーチといった動きに向き合っています。これは恐れることではなく、むしろわくわくする冒険です。なぜなら、そこにこそ、原点に立ち返り、「神が本当に望んでおられる教会」を築くチャンスがあるからです。
神の愛と真理に満ちた教会を、私たちは心から目指したいです。自分の好みや安心感よりも、「神が最も喜ばれることは何か?」をいつも問いながら、謙遜に、一緒に探していきたいです。ぜひとも、東京をはじめ、これから開拓伝道に挑戦していく人たちを応援してください。日本全国の開拓伝道に献身する兄弟姉妹のためにお祈りしてください。マラナタ! 主イエスよ、来たりませ!
*聖句は©️日本聖書協会
福田ダニエル/ふくだだにえる
米国でバイブルワーカー、米国カリフォルニア州の文書伝道部、日本教団伝道局スタッフ、三育学院教会、三育袖ヶ浦教会での働きを経て、2025年4月から、東京開拓伝道プロジェクトMUT集会所に配属。
アドベンチスト・ライフ2025年7月号