セブンスデー・アドベンチスト教会

ノアの声

ノアの声

「この地は神の前に堕落し、不法に満ちていた。神は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。神はノアに言われた。『すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。……見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える。わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。』……ノアは、すべて神が命じられたとおりに果たした」(創世記6章11〜14、17、18、22節)。
神は、再びこの罪の世界を滅ぼそうとされています。神の聖とサタンの罪とは共存しえないからです。しかし、同時に神は人類のために「キリストの十字架の福音」という箱舟も用意して下さいました。その恵みの福音を信じ、その箱舟に身を置く者には絶対の救いを約束して下さったのです。私たちは自ら箱舟を造る必要はありません。神がすでに用意して下さっているのです。私たちはその箱舟を信じる信仰のゆえに、来るべき裁きの日を平安と希望をもって迎えることができるのです。
ノアは、その洪水を待つ日々、ただ箱舟を造っていただけではありません。人々に警告と箱舟への招きを訴えていたのです。しかし、多くの人々はノアを狂信者だと言い、ノアを冷笑したのです。ノアの言葉を信じる者はいませんでした。冷たい空気の中にノアの声だけが虚しく響き渡るようでした。
「しかし、ノアは、暴風の中の岩のように立っていた。人々の侮りとあざけりに囲まれながら、彼は清廉潔白で不動の忠実さを示した。ノアの言葉には力があった。それは、神がそのしもべによって人間に語られる神の声であった。神との結合が、彼を無限の力によって強くした。彼は120年の間、人間の知恵で判断すればとうてい不可能だと思われる出来事に関して、当時の人々に厳粛な声で語った」(『希望への光』49ページ、『人類のあけぼの』上巻93ページ)。
やがて洪水が襲ってきたとき、箱舟に入って救われたのは実にノアとその家族の8人だけでした。神の人、ノアの120年の伝道の成果は、その家族を救うことだけに終わったのです。他の人々はみな滅んでいきました。世俗にまみれた不信仰な時代の恐ろしい結末です。現代の日本もノアの時代と同様に神をおそれぬ世俗の世界です。罪に支配された世界です。
かの日に人々の救いのためにノアを召し出した神が、同様の使命のゆえに今私たちを召し出しておられます。この日本に住む人々に、世の終わりの警告と福音の箱舟への招きのメッセージを語らせようと召しておられます。困難を承知の上で、神は私たちに声を上げよと召しておられます。結果はどうであろうと、ノアと同じようにメッセージを語り続けよと召しておられるのです。その召しに応えて、私たちはノアのように堅く神と結ばれ、人々の救いを祈りつつ忠実に厳かに声を上げ続けるのです。

教団総理 島田真澄 アドベンチスト・ライフ2019年3月号