今年は、宗教改革500周年の記念の年となります。この機にローマ・カトリック教会は、さまざまな教派に対し「多様性の一致」を呼びかけ、東方正教会のみならず、聖公会、プロテスタント教会の多くの教派がこれに応じています。教会一致(エキュメニカル)運動と呼ばれる運動を推進してきた多くのプロテスタント教会も、このカトリック教会の姿勢を歓迎しています。キリスト教会が内なる争いをやめて一致する、一見喜ばしく美しいことのように見えます。
セブンスデー・アドベンチスト教会は、プロテスタント教会の一教派であり、各教派の素晴らしい教えが聖書的に集約された教会です。特に、神の律法の回復という大切な使命を与えられた教会です。私たちもこの教会一致運動に参加するのでしょうか。宗教改革の精神は今後いかに守られるのでしょうか。
宗教改革の精神は、「恵みのみ」「信仰のみ」「聖書のみ」という三語に集約されると言われます。それは、カトリック教会の伝統的な教えに対するプロテスト(反抗)精神を象徴する言葉でした。「恵みのみ」とは、罪人の救いの根拠は、ただ神の恵みのみにあるということ、教会の権威にあるのではありません。「信仰のみ」とは、キリストの十字架によってすべての人類に提供された神の恵みを自らに適用する手段は信仰のみであるということ、決して私たちの善き業が私たちを救うのではありません。そして「聖書のみ」とは、私たちクリスチャンの信仰と行為の基準は、教会の伝統や教えにあるのではなくただ聖書のみにあるということです。
たとえ、「信仰による義認」という教えにおいて、カトリック教会とルーテル教会がその理解において一致し和解したとしても、それは聖書の教えの重要だけれども一つの教えにおける一致でしかありません。聖書はもっと広く深く高い真理を示しています。セブンスデー・アドベンチスト教会は、教理主義ではなく聖書主義の立場をとる教会です。聖書の真理は何かを追い求め続ける教会です。真理の漸進的理解を信じる教会です。私たちにとって安息日、再臨、聖所、死後の状態、預言の霊について等は、妥協することのできない聖書の教えです。いま「聖書のみ」というプロテスタント教会の精神がもっと強調されてよいのだと思います。
私たちは、この宗教改革500周年にあたり、さらに聖書の民であることを自覚し、聖書の学びを深めていきたいと思います。聖書のみが真理の主であるイエス・キリストを啓示するのです。聖霊によって神のみ言葉のみが、私たちを救い、私たちを造り変えるのです。私たちの教会は主の再臨に向かって更に霊的に成熟していきたいと思います。教理主義でも律法主義でも福音主義でもなく、真実の神の民を目指したいと思います。
他教派との安易なる一致については一線を画したいと思いますが、教会内の聖霊による一致は、切なる祈りの課題です。
教団総理 島田真澄 アドベンチスト・ライフ2017年10月号