セブンスデー・アドベンチスト教会

壁を打ち破るもの

壁を打ち破るもの

使徒行伝11章には、アンテオケの町で初めて、弟子たちがクリスチャンと呼ばれるようになったと書かれています。この町はまた、異邦人伝道が始まった場所でもあります(使徒行伝14章26節)。  

「さて、ステパノのことで起った迫害のために散らされた人々は、ピニケ、クプロ、アンテオケまでも進んで行ったが、ユダヤ人以外の者には、だれにも御言を語っていなかった。 ところが、その中に数人のクプロ人とクレネ人がいて、アンテオケに行ってからギリシヤ人にも呼びかけ、主イエスを宣べ伝えていた。 そして、主のみ手が彼らと共にあったため、信じて主に帰依するものの数が多かった」(使徒行伝11章19~21節、口語訳)。

ギリシャ語を母語とするユダヤ人信徒は、ステパノの殉教に続く迫害でエルサレムから追放されました。しかし、アンテオケまで逃れた人たちの中から数人が聖霊に促されて、強固に立ちはだかっていたユダヤ人と異邦人の間の心の壁を突破したのです。「数人のクプロ人とクレネ人」とあるのみで、名前も記録されていません。しかしこの無名の信徒伝道者が、ユダヤ人の中だけに閉じ込められていたキリストの福音を全人類に解放する扉を開いたのです。

おそらく彼らは、そんな大それたことをしたという意識はなかったでしょう。キリストの言葉を語らずにおれなかったので、ギリシャ人にも語ったのです。それは、聖霊に促された自発的行為でした。

使徒行伝10章に、百卒長コルネリオとその家族に聖霊が降った出来事が記録されていますが、11章前半には、その報告を受けたエルサレム教会が異邦人伝道の"解禁"を消極的に承認しています。これはエルサレム教会の公式な方針転換ですが、アンテオケの信徒たちはこれとは関係なく、やすやすと壁を乗り越えてしまっています。

エレン・ホワイトは彼らについてこう書いています。「アンテオケの信者たちは、神が自分たちの生活の中に働き、『その願いを起させ、かつ実現に至らせる』ことを認めた(ピリピ2章13節)。彼らは、永遠の価値には全くむとんちゃくに見える人々の中に生活していたが、心の正直な人々の関心を引いて、自分たちの愛し仕えている主について、積極的なあかしをたてようと努力した。彼らは、そのささやかな働きをとおして、いのちのことばを効果的なものとする、聖霊の力によりたのむことを学んだ。こうして彼らは、生活のさまざまな歩みをとおして、日ごとにキリストに対する信仰をあかししていった」(『患難から栄光へ』16章)。

当時の教会がぶつかった(あるいは自ら維持し続けた)異邦人伝道の壁を打ち破ったのは、無名の人々でした。現在私たちが直面している世俗社会の壁を破る神の器が、今この文章を読んでくださっているはずです。

*聖句は©️日本聖書協会

アドベンチスト・ライフ
2021年3月号
教団総理 稲田 豊