今期の安息日学校では、三天使のメッセージについて学んでいます。聖書研究ガイドの序文で著者のマーク・フィンレーは、1844年という年は、現代社会を形成している諸要素が萌芽した特別な年であることを指摘しています。まず、「神は死んだ」という発言で有名なフリードリヒ・ニーチェが、この年に生まれています。近代の最も影響力のある無神論者となり、キリスト教の道徳的影響を「奴隷道徳」と蔑みました。その「奴隷道徳」の中核たる十戒を叩き割って、神を否認する超人の出現を彼は志しました。しかし、超人を目指すその思想は、行き詰まらざるをえません。彼自身、晩年に精神を病んだことが、その思想の過酷さを何よりも表しています。
また、1844年にカール・マルクスが、後に『資本論』として発刊する最初の段階の草稿をまとめています。神がいない世界でも歴史は進展し、完成に至るという唯物史観は、ソ連、その他の共産主義国家として20世紀に体現されました。今も中国をはじめとするいくつかの国家に思想が残っているだけでなく、資本主義社会においても、その行き詰まりから、資本論的思想がリバイバルしています。日本でも若い世代のマルクス主義者が台頭してきています。そして、1844年にチャールズ・ダーウィンは、進化論の考えを初めて草稿にまとめました。
あたかもこれらに対抗するかのように、ダニエル書8章14節の2300の朝夕の預言が1844年に成就し、セブンスデー・アドベンチストが産声を上げたのです。それは、マルクスの唯物史観、ニーチェの無神論哲学、ダーウィンの進化論が蔓延る世界に、創造主なる神が差し伸べてくださった救いの手でした。これらのことすべてが、1844年に偶然起こったとは考えられないと、マーク・フィンレーは言います。マルクスの唯物史観に対して、私たちはキリストとサタンの大争闘史観をもって答えます。生存闘争としての進化論的世界観に対して、私たちは安息日に創造主と出会い、そこにある大きな喜びと安息を証しします。ニーチェの思想に対し、私たちにとっての律法は、決して神の過酷なくびきではなく、私たちを悔い改めさせ、キリストにある救いに導くガイドです。また、人間としての正しい在り方を永遠に示し続けてくれるものでもあると主張します。
今までの学びの中で、この終わりの時代にセブンスデー・アドベンチストのいただいた三天使のメッセージがいかに重要なものであるか、私たちは改めて教えさせられています。まさに今、三天使は、私たちの教会を通して世界に叫んでいるのです。『種の起源』出版の翌年に、世界の創造と回復を表すセブンンスデー・アドベンチストの名称が定まったのも、偶然ではありえません。
*聖句は©️日本聖書協会口語訳を使用
アドベンチスト・ライフ2023年5月号
教団総理 稲田 豊