異教国日本でのキリスト教伝道は簡単ではありません。信教の自由が保障され、礼拝も伝道も何の妨げもなく行うことができるのに、キリスト教人口は下降の一途をたどっています。なぜでしょうか。日本独自の文化、特徴が大きく影響しています。代表的なものを確認してみましょう。
第一に、日本は和の文化の国です。古来より「和をもって尊しとなす」文化です。絶対者なる神との縦の関係よりも多くの場合、親しい家族、隣人との横の関係を重んじます。神に従うことで家族、隣人に軋轢が生じ、彼らを悲しませ、あるいは迷惑をかけると思われる場合、多くの日本人は躊躇します。神との関係の破れよりも人間関係の破れを恐れるのです。
第二に、日本は受容的な文化を持つ国です。神道の氏子の数と仏教の檀家の数を足せば優に日本人口の数を超えます。神棚と仏壇が並んでいる家は少なくなく、その前にクリスマスツリーが飾られます。ですから12月24日の夜は教会のクリスマスコンサートに行き、1週間後の大みそかには寺院で除夜の鐘を突き、翌元旦には神社に初もうでに出かけるのです。そこには、何の矛盾もありません。宗教を含め、すべての良いところを受け容れるのが日本の文化です。一方、一神教のキリスト教は排他的です。真理も救いもここにしかないと主張します。ここに文化的な衝突が生まれます。
第三に、日本では進化論教育が徹底されています。文科省もNHKも進化論を無批判に強調しています。生命は百数十億年前のビッグバンにより偶然誕生し、その後進化を重ねて現在の人間となったと99パーセントの日本人は信じているのです。その中で創造主を信じるキリスト教、日本人にとって創世記の第1章がすでにつまずきなのです。
このほかにも日本での伝道の困難な理由はたくさん挙げることができるでしょう。どこにこの幾多の困難を越える道、日本の伝道困難を突破する道があるのでしょうか。それは、「人」です。クリスチャン一人ひとりの存在です。一人ひとりの笑顔です。喜び、平安、希望にあふれた笑顔がすべてを突破する道であり鍵です。この世界へのキリストのメッセージは、教理よりも何よりも、キリストにある彼の弟子たちです。彼らによって人々はキリストに引きつけられるのです。
「わたしたちの推薦状は、あなたがた自身です。それは、わたしたちの心に書かれており、すべての人々から知られ、読まれています。あなたがたは、キリストがわたしたちを用いてお書きになった手紙として公にされています。墨ではなく生ける神の霊によって、石の板ではなく人の心の板に、書きつけられた手紙です」(コリントの信徒への手紙二・3章2、3節)。
キリストのこの世界に送られた喜びの手紙、平安の手紙、希望の手紙は私たち自身です。私たちが魅力ある笑顔のアドベンチストになるとき、人々もその笑顔の創り主に不思議を覚え、そのお方を知りたいと思うでしょう。キリストを仰ぎましょう。キリストを知りましょう。キリストに満たされましょう。そして、全存在をもってキリストを証ししましょう。
教団総理 島田真澄 アドベンチスト・ライフ2018年12月号