アブラハムの子孫の戦いが世界を揺るがしています。4000年前、アブラハムを召し出された主なる神は言われました。「地上の氏族はすべて/あなたによって祝福に入る」(創世記12章3節)。
神はただお一人である。すべてのものは神によって造られた。そう信じる人はみな、アブラハムのおかげでその祝福を受けています。さらにその神がご自身のみ子イエス・キリストの贖いによって私たちを罪から救ってくださった事実を知ることができたのは、本当に大きな祝福です。イエス・キリストも、「救いはユダヤ人から来る」(ヨハネによる福音書4章22節)と言われました。この喜ばしき知らせを私たちも聞きました。この大きな祝福をアブラハムとその末裔から受けたのです。また最大の祝福であるイエス・キリストご自身もアブラハムの子孫としてお生まれになりました。
現在アブラハムの2人の子イサクとイシュマエル、それぞれの子孫であるユダヤ人とパレスチナ人が激しく争っている光景に胸が痛みます。私たちは聖書の古の歴史が現代の世界を揺るがせているのを目撃しています。ガザの戦争は、10月7日、イスラエルの最大の祝日ヨムキプールにハマスが奇襲攻撃をかけて始まりました。ちょうど半世紀前も、このヨムキプールにエジプトとシリアがイスラエルに奇襲攻撃をかけて第四次中東戦争が始まっています。
ヨムキプールとは贖罪の日のことです。私たちにとっても大事な日です。ダニエル書8章にある2300年の預言期間の終わりに「聖所は清められる」と予告されているのは、贖罪の日の成就を示唆していました。贖罪の日にイスラエルの民は一年の罪の完全な清めを受けました。すべての罪が告白され、赦され、清められたのです。その贖罪の日は、いまや天の至聖所においてイエス・キリストにより現実になっています。
私たちがへりくだり罪を告白するとき、私たちは赦され、清められるのです。そうやって主イエス・キリストは私たちを天のみ国に迎え入れるにふさわしく整えようとしています。私たちはイエスとの結婚に備える花嫁として磨き上げられています。いわば究極の花嫁修行でしょうか。
ですから私たちは、聖所の跡地を巡って争っているアブラハムの末裔たちに、もうそこに拘らなくてもいいと言いたいのです。求めるべき聖所は天にあるのです。すべての人に地上の都にもう拘らなくてもいいと伝えたいのです。
「この地上には、永遠の都はない。きたらんとする都こそ、わたしたちの求めているものである」(ヘブル人への手紙13章14節、口語訳)。
*聖句は©️日本聖書協会
アドベンチスト・ライフ2024年1月号
教団総理 稲田 豊