聖書の預言の光の中で、現在の東ヨーロッパの戦いを、いかに、正確に理解することが出来るでしょうか?
~アドベンチスト・ニュース・ネットワーク2022年3月10日配信~
フェリプ・モリス(ブラジルの、アドベンチスト・ポータルとウェブサイトApocalipse.comの記者、編集長。当記事は、最初、南アメリカ支部のニュースサイトに掲載されました)
最近のロシアによるウクライナ侵攻は、地政学、人道的危機、そして、預言的側面について、議論を引き起こしています。私は、ロシアとウクライナの衝突の発端、あるいは、このような状況の背景については、この記事では、詳しく取り上げません。その現象をすでに妥当性と共に、適切に説明している専門家がいますし、少なくとも、意見に基づいたいくつかの視点が提供されています。人道的危機については、アドラなどのホームページ(adra.org)の他、news.adventist.orgや、SNSから最新の援助状況を見ることをお勧めします。
私は、このような時に通常引き起こされる疑いを明らかにする助けとなるであろう、いくつかの側面を指摘することは重要であると信じます。死、破壊、経済的・政治的・そして地球全体に影響のある敵意に直面して、誠実なクリスチャンたちが持つであろう、いくつかの質問があります。
その質問の中の一つは、ロシアによる攻撃のようなものは、聖書に預言されているのか、あるいは、ロシアは、神の御言葉の中で言及されている力なのか、というものです。
ロシアと聖書の預言
数年前から今に至るまで、いろいろな教派の聖書預言の学者のグループは、エゼキエル書の38章、39章、特にゴグに対する預言の中に、ロシアを当てはめてきました。この思想の主な理由の一つは、38章2節にゴグは、ロスとメシェク(ニュー・アメリカン・ヴァージョン聖書を参照)の王子である、という言及です。表音的同化によって、多くの人々は、ロスをロシアと結び付け、メシェクを、ロシアの首都であるモスクワを言い表す言葉として、解釈します。
この考えに賛成する人々は、ゴグのイスラエルに対する攻撃が、文字通り起こると信じています。この視点を持つ人々は、ディスペンセーショナリズムとして知られる考えの持ち主で、特定の議論を持っています。彼らは、将来、イスラエルが、ロシアを含んだ、他の国々によって起こされる大きな戦いに引き込まれると、主張します。考古学と聖書の史実性の専門家である、ロドリゴ・シルバ氏は、YouTubeの中で、ディスペンセーショナリストたちは、ヨハネの黙示録16章のハルマゲドンの戦いの中で、これが起こると理解している、と強調しています。(1)
エゼキエル書の言語
セブンスデー・アドベンチスト・バイブル・コメンタリーは、エゼキエル書38章、特に2節について、「ロシュを固有名詞として、ロシュと翻訳することには、疑問があり、ヘブル語では、良く使われているその単語は、旧約聖書の中で、600回登場します。その基本的な意味は、『頭』であり、エゼキエル書以外では、ロシュの固有名詞としての言及は、創世記46章21節で、ベンジャミンの息子たちの一人に与えられているのみです」と述べています。(2)
同書によれば、ロシア(Russia)は、ルス(rus)を起源とするのが最もふさわしいとしています。同書は、「ロシュとロシアの音の類似は、純粋に偶然であると見ることができます。約10世紀以前のその国に、その名を当てはめる証拠は、ないと思われます」と言及しています。(3)
エゼキエル書とヨハネの黙示録
アドベンチストの神学者、ジリ・モスカラ氏は、2007年に発表された論文の中で、エゼキエル書38章と39章は、ヨハネの黙示録20章8節のような他の聖句を考慮してこそ、正しく理解される、と結論づけています。この聖句の中で、使徒ヨハネは、ゴグについて、千年期の後、つまり、イエス・キリストの再臨の後にサタンと失われた人々の最後の破滅において、すでに言及していました。モスカラ氏は、ゴグのイスラエルに対する攻撃は、バビロニア捕囚の後に歴史的に起きたと解釈されうるという考えを擁護しています。これは、もし、国家としてのイスラエルが神に対して忠実であった場合、ありえるように聞こえます。
しかし、モスカラ氏は、ヨハネは、エゼキエル書の預言を一般化した(universalized)、と考えています。モスカラ氏にとって「ゴグとマゴグは、もはや、国家としてのイスラエルの政治的な敵ではなく、終末的な敵、つまり、すべての世代の悪者としての敵対者、アダムからキリストの再臨までの、神と主の価値観と主に忠実に従う人々にかたくなに反逆した人々です」。(4)セブンスデー・アドベンチスト・コメンタリーも、同様の理解を示し「ゴグは、異教の万軍のリーダーをエゼキエルが抽象的に述べている存在であり、それが、イスラエルの再興の後、神の民が従順を条件に約束された豊かな生活を楽しんでいる時に、彼らに対して戦いを挑むと理解するのが、最も適切でしょう」と言及しています。
バビロンと第三次世界大戦?
同じYouTubeの中で、シルバ博士は、ゴグは、バビロンのコードネームであるという事実に言及する注解者を思い出しています。彼は、詳細にわたって、この結論になるテクニックを説明します。ジョセフ・グレイグ氏も1978年に、論文の中でこの暗号についてほのめかしています。その中で、彼は、「エゼキエル書の中で言及されている異教の大群は、神の最後の勝利まで続く、神の王国と戦う、悪の力を象徴的に示すために使われる可能性があります」と指摘しています。(5)
この主題は、長いため、もう一つの論文に値します。しかしながら、聖書は、世界は、第三次世界大戦あるいは核の攻撃でついに破壊されるとは、示唆していません。ダニエル書2章は、永遠の王国が、いかに、私たちが今日見ている世界に終止符を打つか、という明白な視点を与えています。
イエスは、マタイによる福音書24章に記録されている有名な預言的説教の中で、再臨前に戦争と戦争のうわさ(6節を参照)が起こると述べています。と同時に、彼は、すべての人に福音が宣べ伝えられ、それが終わりの大きなしるしであると、確信を持って強調しています。
イエスの再臨
マラキ書4章、ペトロの手紙2・3章10節、ヨハネの黙示録20章、そして、他の聖句によれば、将来、悪の完全な全滅があります。それは、罪に執着し、悔い改めと生活の改変に導くキリストの恵みを拒んだ人々への報いです。彼らは、忠実な神の意思と目的に対する、悪の概念に執着した人々であり、バビロンと、明らかにエゼキエルが「ゴグとマゴグ」と呼ぶことを選んだものによって、示されている人々です。
旧約聖書に約束され、ヨハネによる福音書14章等でイエス御自身によって確認されたキリストの再臨こそが、宇宙歴史の頂点です。これこそが、人々の生活の中に、希望と、間もない将来に対するより良いビジョンへの深い確信を与えてくれる理由であるべきです。
引照:
(1)Russia versus Ukraine, prophesied in the Bible? Live with Dr. Rodrigo Silva – https://www.youtube.com/watch? v=l9tfl5bYTfk&t=2356s
(2)NICHOL, Francis. Seventh-day Adventist Biblical Commentary. Vol. 4. Tatuí: Casa Publicadora Brasileira, 2012, p. 776.
(3)NICHOL, Francis. Seventh-day Adventist Biblical Commentary. Vol. 4. Tatuí: Casa Publicadora Brasileira, 2012, p. 777.
(4)MOSKALA, Jiri. “Toward the Fulfillment of the Gog and Magog Prophecy of Ezekiel 38–39.” Journal of the Adventist Theological Society, 2007. Available at https://digitalcommons.andrews.edu/jats/vol18/iss2/6/.
(5)GREIG, Josef. “Gog and Magog: Hebrew ciphers help solve a problem and knock some cherished speculations.” Ministry Magazine, 1978. Available at https://www.ministrymagazine.org/archive/1978/02/gog-and-magog.
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