セブンスデー・アドベンチスト教会

広島三育学院高等学校卒業式

広島三育学院高等学校卒業式

第43回広島三育学院高等学校卒業式が1月27日に行われました。

田渕裕校長の式辞「一番大切なもの」を胸に卒業生たちは旅立って行きました。

第43回卒業生の皆様。ご卒業おめでとうございます。

威風堂々の曲に包まれ、どのような思いを胸に抱きながら、この学校における、最後の歩みを終えましたか。入学したあのころ、まさか自分にこの日がやってくるなどということは、想像していなかったでしょう。しかし、ついにその時がおとずれました。今日の皆さんを見ていると、よくぞここまで成長したなという感慨と、お別れの寂しさが入り混じった気持ちになります。

さて、パラダイムとは、その時代の支配的概念、大多数の者が受け入れている流行の考え方のことを言います。以前、太陽が地球の周りを回るという考えが主流だった時代に、ガリレオが地動説を説き、それが異端だとし、彼は6年間も拷問や裁判を受けました。彼の説はあまりにも突飛で、時代がその考えを受け入れるようになったのは、彼の死後350年も後のことです。このことからも私達は気を付けなればなりません、大多数の者が受け入れている考え方は、必ずしも正解ではないということです。

時代は、昭和、平成、そして令和と移り変わりました。同時に人の価値観も、大きく変わりました。数十年前には受け入れられなかった多くの考えが、今では普通に受入れられる時代です。「多様性」という言葉でくくれば、それまでなのですが、自由主義の進んだ今日は、人に迷惑をかけなければ、どのような価値観も「あり」の時代となりました。

自己中心的な考えがポピュラーになり、「自分さえよければそれでいい」。我々は「たまたま」存在しているのだから、勝ち残った、優れたものが、自由に楽しく、やりたいことをするのは当然だ。レベルの違う人達のことには興味がない、「自分は自分」「人は人」、それでいいのだ。このような考え方が、皆さんが出て行く社会の支配的概念だ、と言うのは、少々乱暴でしょうか。しかし、当てはまるところもあるはずです。

聖書は二千年前、私達の住むこの時代のことを的確に預言しています。テモテの手紙にはこうあります。

「そのとき、人々は自分自身を愛し、金銭を愛し、ほらを吹き、高慢になり、神をあざけり、両親に従わず、恩を知らず、神を畏れなくなります。」

ペテロの手紙にもこう記されています。

「終りの時には、欲望の赴くままに生活しあざける者たちが現れ、あざけってこう言います。「主が来るという約束は、いったいどうなったのだ。父たちが死んでこのかた、世の中のことは、天地創造の初めから何一つ変わらないではないか。」

ドキッとさせられる聖書の言葉です。終りの時代に住む我々現代人の思考の方向性は、二千年前から予測されていたのです。

皆さんがこの広島三育学院で過した三年間を振返って下さい。面倒なこと、嫌なことも多くあったでしょう。辛いこと、悲しいこともあったでしょう。しかし仲間と寝食を共にし、笑いながら、泣きながら、祈り、学び、働きつつ身につけたのは、人に仕え、神に仕えるという、自己犠牲的な精神です。そしてその考え方を基にした生き方は、そしてその生き方を基にしたあなたの「生きる目的は」、今社会を大きくとらえている、自由主義的な考えの流れとは、逆を向いているはずです。

この卒業式の式辞を考えるの、案外時間がかかりました。学校行事の、このようなかしこまった場所で、保護者も来賓もいらっしゃる、こんな状況で、あまり変なこと言えませんからね。ですから、少し格好つけたようなことを語っていますが、でも知っています、この後の握手会、涙涙のお別れ、そしてこの山を下りて、家に着く頃には、私が今ここで話したことの内容など、ほぼ全て忘れられているということを。

しかし卒業後も、一つだけ必ずしていただきたいことがあります。校長からあなたへの宿題です。これからの皆さんの人生で、困難や逆風にぶつかった時に、また自分がどのように前に進むべきか迷い、立ち止まった時に・・・就職、結婚、その他、日々の生活にある小さな選びから、人生を左右する大きな選びをしなければならない時に、かならずこう自分に質問して下さい。「一番大切なことは何?」。何があっても、どのような抵抗にあっても、それが流行の考え、パラダイムから外れていたとしても、つらぬかねばならない、「一番大切なことは何なのか」と、自分に問うことを決して忘れないで下さい。

その「一番大切なこと」は何ですか?という質問への答えは、もう皆さんが既に出しています。自分達の選んだ卒業テーマとモットーを、これからずっと、責任を持って覚え、実行して下さい。

この世界には二種類生き方しかありません。それは、「神様との関係を第一にする」生き方か、「それ以外」の生き方です。あなたがたは、前者を選ぶと表明しました。これを絶対に忘れずにいて下さい。

ご臨席の保護者の皆様、私達に託された、この尊い60名の魂の、門出となるこの時を、共に迎えることができましたことを、心から嬉しく思います。また広島三育学院のためにいつも祈り、応援下さいましたことを心から感謝いたします。広島三育学院と皆様の関係は、この卒業式という句読点を挟み、これからも続きます。ここにいる卒業生一人一人の10年後、20年後を共に心配する仲間でありたいと、そう願っております。彼らの人生の成功と幸せを、そしてイエスキリストにある救いの獲得を共に応援するものとなれればと願っております。

さて、話したいことはまだまだありますが、この時もそろそろ終りにしなければなりません。卒業生の皆様、あなたは、どのようなパラダイムの、大渦の中にあっても、決して変わることのない真理の道筋をこの三育でみつけました。神様に与えられた、そのことを決して忘れることなく、これからの人生を歩み続けて下さい。今の皆さんには、前進あるのみです。「一番大切なもの」を胸に抱き、さあ、顔を上げ、胸を張り、振返ることなく、ここを巣立って下さい。

愛おしい60名の卒業生の皆様に、広島三育学院高等学校の卒業を宣言し、第43回卒業式の式辞とさせていただきます。

2020年1月26日

広島三育学院高等学校校長 田渕裕

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