セブンスデー・アドベンチスト教会

コロナウイルスは終末のしるし? 現在の危機から教訓を引き出す

コロナウイルスは終末のしるし? 現在の危機から教訓を引き出す

コロナウイルスは終末のしるし? 現在の危機から教訓を引き出す

クロード・リクリ(世界総会副総務)

コロナウイルスは終末のしるしでしょうか。そうであるとも、そうでないとも言えます。終末のしるしと聞いて人々が連想することと、聖書の教えの間には、違いがあるからです。

イエスは終末のしるしについての教えの中で、「大きな地震があり、方々にや疫病が起こ(る)」(©️日本聖書協会 ルカによる福音書21章11節)と言っておられます。さらに、「しかし、これらのことがすべて起こる前に、人々はあなたがたに手を下して迫害(する)」(12節)と言われました。

疫病が終末のしるしとなるのは、迫害が始まったあとです。ヨハネの黙示録では、7人の天使の災い(©️日本聖書協会 ヨハネの黙示録15章1節)の1つ目で「獣の像を礼拝する者たちに悪性のはれ物ができ」(©️日本聖書協会 ヨハネの黙示録16章2節)ます。つまり、「世界の初めから今までなく、今後も決してないほどの大きな苦難が来る」(©️日本聖書協会 マタイによる福音書24章21節)時になってはじめて、疫病が終末の世界を極限まで苦しめるのです。したがって今のところ、コロナウイルスが終末のしるしであるとは言えません。

歴史上の疫病
コロナウイルスが終末のしるしであるとは断言できない一方、私たちの直面している状況やその長期的な影響が、預言の成就を加速させ、歴史の流れを変えることがないとは限りません。

事実、疫病は3世紀のキリスト教会の成長に多大な影響を与えました。西暦249年から262年に、天然痘がローマ帝国を襲いました。疫病は、その目撃者であり、記録を残した司教キプリアヌスの名にちなんで、「キプリアヌスの疫病」と呼ばれるようになります。(注1) 疫病は食糧生産とローマ軍に影響を及ぼし、帝国の弱体化を招きました。

流行の最盛期には、ローマで1日に5千人が死亡したと言われています。歴史家のカイル・ハーパーによれば、この時期はまるでローマ帝国のであるかのように思われました。しかし、「目前に控えた疫病による死と、キリスト教聖職者の顔に浮かぶ揺るぎない信念は、かつてないほど信仰への回心をもたらした」のです。(注2)

「迫害と疫病のさなか、キプリアヌスは信徒たちに、敵に愛を示すよう懇願した。結果として、彼らの思いやりはだれの目にも明らかとなった。病人に対する基礎的な看護は、その致死率に多大に作用する。エボラ出血熱を例に挙げれば、水と食料の供給は死亡率を激減させる。キリスト教倫理は信仰をけたたましいほどに宣伝した」(注3)

疫病に対するクリスチャンの奉仕によって、3世紀末のキリスト教は、皇帝が残酷な迫害によって押さえつけねばならないほど、力をつけました。4世紀末には、皇帝コンスタンティヌスが、教会と争うよりも結びつくほうが得策であると判断します。キリスト教の国教化は、苦難と逆境の時に、クリスチャンがまれな思いやりと回復力を発揮したことの結果です。

私たちの信仰を成長させる機会
私たちにはどのような機会が与えられているのでしょうか。そのことを話すのは、時期かもしれません。いまだ世界は、この大災害の解決策を探している真っ最中です。やがて必ずワクチンや医療計画が開発され、過去の疫病と同様、この疫病も克服されることでしょう。

しかし、1つだけ確かなのは、経済的痛手が物質主義的な世界に対する疑念を生むということです。私たちが普段当たり前に思っている物事は、健康や、行動の自由、予測可能な経済法則や雇用に依存しており、それらが根底から揺らぐとき、聖霊は私たち現代人の心と良心に、よりはっきりと語りかけられます。私たちはどのように応えるべきでしょうか。

まずは、私たちが目撃していることの結果を冷静に考察する必要があります。「だから、いつでも心を引き締め、身を慎んで、イエス・キリストが現れるときに与えられる恵みを、ひたすら待ち望みなさい」(©️日本聖書協会 ペトロの手紙一・1章13節)。コロナウイルスの危機とその結果は、主の再臨に先立って起こる出来事のリハーサルとなるでしょう。

神がその子どもたちにみ言葉を通して約束しておられる確証を思い起こしましょう。
「神は羽をもってあなたを覆い/翼の下にかばってくださる。神のまことは大盾、小盾。夜、脅かすものをも/昼、飛んで来る矢をも、恐れることはない。暗黒の中を行く疫病も/真昼に襲う病魔も」(©️日本聖書協会 詩編91編4~6節)

この確証を携え、かつてのクリスチャンたちと同様に、歴史の流れを変えるような方法で、まわりのために奉仕しましょう。

*本稿は、『アドベンチスト・レビュー』2020年3月26日号に掲載された‘Coronavirus: A Sign
of the End?―Drawing positive lessons from this present crisis’の抄訳です。

(注1)“Saint Cyprian,” Encyclopedia Britannica, 2013.(英文)
(注2) Kyle Harper, The Fate of Rome: Climate, Disease, and the End of an Empire
(Princeton University Press, 2017), p. 71.(英文)
(注3)同上

アドベンチストライフ6月号掲載予定

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