セブンスデー・アドベンチスト教会

人生の海の嵐に

人生の海の嵐に

パウロは大きな情熱を持っていました。すべての人に福音を宣べ伝えたい。そのために、世界の中心であるローマに行きたい、と。ダマスコ途上にてイエス様に出会い、ひたすら走り続けてきた伝道者パウロは、人生の旅路において、その大きな夢が叶いました。裁判のため、ローマに護送されることになったのです。
囚人としてではありますが、長年の夢ローマへの旅が始まります。彼は神様の導きに感謝したことでしょう。

嵐に見舞われる
しかし、ローマへの道のりは困難を極めました。海路2700キロ、陸路180キロに及ぶ大旅行で、特に船旅は危険でした。風も強く、航海が危うい季節に差しかかっていました。パウロは航海の危険を指摘しますが、船長の判断により船は進みます。案の定、クレタ島の港を出港してまもなく、船は暴風に見舞われます。
「しかし、ひどい暴風に悩まされたので、翌日には人々は積み荷を海に捨て始め、三日目には自分たちの手で船具を投げ捨ててしまった。幾日もの間、太陽も星も見えず、暴風が激しく吹きすさぶので、ついに助かる望みは全く消えうせようとしていた」(使徒言行録27章18~20節)。
私たちの人生においても嵐がやってきます。情熱を持って信仰の歩みを進めていても、神様の働きを成していても、それを吹き消すほどの大きな困難や誘惑に襲われることがあります。コロナウイルスも大きな嵐のような出来事です。
パウロの船路もそうでした。船はしばらくの間、太陽も星もない空の下をただよい、船員たちは絶望していきました。パウロも苦しい思いをしたことと思います。

執り成しの祈り
しかし、パウロは神様を信頼していました。そして、祈っていました。神様の守りと導きを求め、275名もの船の仲間のために執り成しの祈りを捧げていたのです。
しばらくして、彼は船員にこう告げます。「しかし今、あなたがたに勧めます。元気を出しなさい。船は失うが、皆さんのうちだれ一人として命を失う者はないのです」(同22節)。祈りの答えが与えられました。船員たちが絶望している中で、たった一人、希望を持ったのです。その理由が次の聖句に書かれています。
「わたしが仕え、礼拝している神からの天使が昨夜わたしのそばに立って、こう言われました。『パウロ、恐れるな。あなたは皇帝の前に出頭しなければならない。神は、一緒に航海しているすべての者を、あなたに任せてくださったのだ。』ですから、皆さん、元気を出しなさい。わたしは神を信じています。わたしに告げられたことは、そのとおりになります。わたしたちは、必ずどこかの島に打ち上げられるはずです」(同23~26節)。
夜に天使のお告げがあったと言うのです。ローマに行くことができると神様が約束してくださった、神様の計画は必ず成る、だから大丈夫だと、彼は説明したのです。
船員たちはその言葉を聞いて希望を抱きました。彼らはパウロの神様を信頼するようになります。一人の信仰と祈りにより、多くの人が勇気づけられ、救われることがあります。嵐の中にあっても、熱心に神様に仕える忠実な祈りの人、世の光として輝く人を神様は探しておられるのです。

神様の働きを感じる
依然として船は漂流したままです。しかし、船員たちはパウロの言葉に励まされ、希望を胸に、自分たちにできることを探し始めました。
「十四日目の夜になったとき、わたしたちはアドリア海を漂流していた。真夜中ごろ船員たちは、どこかの陸地に近づいているように感じた。そこで、水の深さを測ってみると、二十オルギィアあることが分かった。もう少し進んでまた測ってみると、十五オルギィアであった。船が暗礁に乗り上げることを恐れて、船員たちは船尾から錨を四つ投げ込み、夜の明けるのを待ちわびた」(同27~29節)。
真夜中、あたりには何も見えません。一見すると、今まで通り、何も希望のない状況かもしれません。しかし、船員たちは何かを感じたのです。それは彼らの心に、「神様が導いている。命を失うことはない」というパウロの言葉があったからです。神様は、私たちがどのような状況であっても共におられます。ただ、私たちは絶望の嵐の中で気がつかないことがあるのです。しかし、神様を信じ頼るときに、確かに神様が共におられ、導いてくださっていることを感じるのです。

調べる
船員たちは何かを感じ、調べました。月も星も見えません。自分たちにできることは水の深さを測ることくらいです。最初に測ると20オルギィア(約37メートル)、しばらく進んで測ると15オルギィア(約28メートル)でした。だいぶ浅くなっていることがわかります。彼らは確かに陸地が近づいていることを確信し、錨を下ろし、夜が明けるのを待ちました。
彼らは、感じたものを確信に変えようと調べました。自分たちの今の状況がどのようなものなのか、神様は確かに導いておられるのか、自分たちはどこに向かっているのか、少しでも知りたいと思ったのです。そして調べた結果、彼らは神様の導きを確信したのです。
コロナウイルスという大きな嵐の中、教会も社会も大きな困難を味わっています。絶望に思える状況かもしれません。しかしそのような状況でも、神様は私たちと共にいてくださいます。導いてくださっています。信仰と祈りによって、その希望を絶やすことなく持ち続けたいと思います。隣人のために祈りたいと思います。
その時、私たちは何かを感じるはずです。神様の働きを、自分たちの置かれた状況を、そして、終末のしるしを。私たちは、自分の現在位置を知るためにも、今一度聖書を調べる必要があります。そして、神様の約束と導きを新たに確信したいと思います。
パウロの人生も、この船旅も、困難の連続でした。しかし、神様は確かに導いてくださり、彼の一行は無事にローマにたどり着くことができました。人生の海の嵐の中にあっても、目的地である港、イエス様の再臨を見据えつつ、前進したいものです。

*聖句は©️日本聖書協会

松下晃大/まつしたこうだい

1994年生まれ。鹿児島県徳之島出身。石川教会、金武集会所牧師。石川三育保育園園長。今年2月に結婚。

アドベンチスト・ライフ2021年7月号